慣れてしまえば
〜子世代編〜





 あの波乱の幕開けから二十余年。
 バーハラの野で無念にも散ったシグルド達の遺児が集まっていた。
「セリス様。そろそろ……。」
「え〜〜!もう出番?もう父上死んじゃったんだ。早いなぁ〜。 もう少しゆっくりしていたかったのに……。」
 ブツブツ言いながら着替えているこの青年こそ英雄シグルドの遺児であり、 皇女ディアドラの長子であるセリス皇子である。
「(毎回毎回どんどん性格が歪んできている気が……)」
 そして彼がオイフェ。そう!あの軍師オイフェである!! あんなに可愛らしかった少年が、こんなに立派な髭をはやして再登場!!
「セリス。うだうだ言ってないでさっさと準備しろ。始めるぞ。」
 そしてこの長身美形なナイスガイ(自称)がシレジア王レヴィン。 セリスに口で勝てる数少ない一人である。
「分かったよ。レヴィン。」
 セリスが着替え終わった所ではじまりはじまり〜♪
「え〜、これから子世代カップリングを発表する。 なお、これについての苦情は一切認めぬ。恨むんだったら馬鹿晶を恨め。 では始める。」
愛しのフュリーの恋人になれなかったからってこれでもかと 言うほど悪口を言っている。フフフ、レヴィン。あとで天罰をくだそうぞ。
「まずは、ラクチェ。相手はファバルだ。」
「何〜〜〜〜〜!?」
 レヴィンの声に三人の男の声が重なる。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!!なんで俺がラクチェと!?」
「そうだぜ。なんでこんななんも接点のないファバルを、 ラクチェとくっつけるんだ!!納得いかねぇ。」
「フッ。何故私を選ばずにこの金の公子を選ぶのか……。あぁ愛とは何故私をこの様に苦しめるのか…(ヨロリ)。」
 混乱するファバル、激怒するヨハルヴァ、好き勝手言って倒れるヨハン。
「まぁ一応理由を言っておく。ラクチェは値切り持ちだから神器使いのファバルに 貢げば金も無駄にならない、からだそうだ。文句あるか?」
 フォルセティ片手にニッコリと微笑むレヴィン。は!!何故魔道書もないのに ブリザードが!?とゆーか聖戦は仲間がブリザードを使うことはできないんだぞ!! 竜族の力とはゲームさえも超越してしまう恐ろしい力なのか。
「ま、私はかまわないわよ。ファバルだったら前から喋ってたし、ね。」
「ん…。そうだな。ま、よろしくな。」
「よし、綺麗にまとまったところで次。ラナ。彼女の相手はデルムッドだ。」
「何!?俺がラナと?」
「まぁ。」
「そうだ。まぁ理由は晶がデルのことを好きなのと、 幼なじみカップルもいいかな、と思ったからだそうだ。」
 さっきよりマシか……。と誰もが思う。デルは誰とも会話がなく、 そのため恋人もあまりできないらしいが、ここのデル君は神の愛を受けて、 恋人を獲得できるのである。
「おい!なんでデルムッドがラナの恋人なんだよ!?おかしいじゃないか!!」
「な、何でだよ!!」
「お前みたいなヤンキーがどうして清楚可憐な妹の恋人になれるんだ!!」
「おい!!俺は別にヤンキーじゃないぞ!!」
「お兄様。言いすぎですわ。デルムッドは家柄も良く、顔もよくみれば なかなかなんですのよ。トサカ頭だからってそんなことを言っては失礼ですわ。」
「トサカ頭……。」
「それに今回はあのヴェルトマーの公子なんですのよ。多少の髪の乱れは目をつぶりましょう。」
「……そうだな。デル、ラナを頼んだぞ。」
「あ、あはははは……」
 トサカだのカッコ悪いだの人気無いだのボロクソに言われて……可愛そうなデル君。 え?そこまで言ってないって?あ、あら?(汗)
「次は……フィー。相手はレスターだ。理由は何となく。本城会話が見たかったからだそうだ。」
「え?…レスター……?」
「あ、よろしく。フィー。」
 これが始まって以来、初めて何もなく終わりそうだったその時!!
「ちょ!ちょっと待てよ!!」
 白髪(え?銀??)の少年魔道士が二人の間に割り込んできた。
「王道から言うと、フィーの相手は俺だろ!?何でレスターなんだよ。」
「お前は前にくっつけたからいいんだと。それに『一緒にシレジアに帰ろう』 だとか何とか言っときながら、ヴェルトマーに連れてかえるんだぜ?そんな奴に渡したくないんだとよ。」
「今回はレヴィンさんが父親だからシレジアに帰れるんだよ。 それに俺はシレジアの王子だぜ?身分的にも俺の方がいいじゃないか!!」
 ぎゃぁぎゃぁとわめきちらすアーサー。それを余裕で返すレスター。
「…もう!!いいかげんにしなさい!!」
 と、しびれをきらしたフィーがスリープの杖を取り出し、二人を 眠らさせてしまった。いくら大司祭ブラギの末裔だからって、 クラスチェンジ前にスリープを使えるだなんて……。竜族の血は、ゲームシステムさえも 超越したすばらしき力なのか。
「はい次!パティだ。これは晶の趣味ということでスカサハだ。」
「え!?なんで俺が??シャナン様なら分かりますが……」
「設定ではデューがファバルとパティを育てたんだ。 で、育ての娘と実の息子が結婚する、っていうのが好きらしい。 勿論、その逆もな。ほら、だからラクチェとファバルも結婚するだろ。」
「なるほど。…パティ。俺シャナン様みたいに立派じゃないけど、いいか?」
「何言ってるの。スカサハはそれで充分だって!!うふふ♪よろしくね、あ・な・た♪」
 ふ〜、なんとかここは血を見ずにすんだな。よかったよかった。
「じゃぁ次。ナンナ。彼女の相手は……アーサー、お前だ。」
「え〜〜〜〜〜〜〜!?」
 レヴィンの声に反応する者約二人。
「何で俺がナンナと?」
「何でナンナがこんな生足白髪魔道士とくっつかなくちゃいけなんだ!! 彼女はトラキアで僕と共に暮らしていくんだ!!」
「な、生足!?なんで俺がそんな変態っぽく言われなくちゃいけないんだ!!」
「だって本当のことだろ。何だったらもう一つつけたしとく? 生足で白髪で馬鹿でおまけにシスコンな魔道士に僕のナンナは渡さない!!」
 あーだこーだ喧嘩し始める二人。あ!ナンナの頭にかの有名な怒りマークが!!
「う…るさいわね!!お兄様!!お願いしますわ!!」
 兄、デルムッドを呼ぶナンナ。愛しの妹に呼ばれてルンルン気分で前に出るデルムッド。 そして、彼等の体が青白く輝き始めた。
「えい!!お兄様!!!」
「くらえ!!ミラクルビーム!!!」
 な、なんと青白いオーラがデルムッドのまわりに集まり、彼の目から 神々しいビームが放たれたではないか!なんというミラクル!! 竜族の力とはこうも……(以下略)
「ギャーーーーーー!!!」
 デルムッドのミラクルなビームにやられて倒れる二人。まきぞえになった ヨハンは後日こんなことを言ったそうだ。 『あんなミラクルを見れるなんて……。カリスマの君。彼は永遠の私のライバルだ。』
――と。
「は〜い、んじゃ次な。お次はティニー!!相手は……リーフだ!!」
 その一言に、リーフが起き上がる。目はもうこれでもかというほど キラキラしている。
「え?私が?はは。光栄だな。こんな可愛いティニーを私の恋人にできるだなんて……。」
「リーフ様…(うっとり)。」
 リーフの言葉にうっとりするティニー。おいおい、さっきその人 アーサーのことボロクソに言ってたよ。いいの?
「次。リーン。彼女の相手はセティだ。」
「……何?」
 一人の男の声で場内の気温は軽く五℃は下がった。さすがは黒騎士。 さすがは竜族の末裔。自然の摂理をも超越してしまうのね!!
「リーンの相手はセティだ、と言ったんだ。文句あるか?」
「あるに決まっているだろう!?俺とリーンは好き合ってるんだぞ!? それを引き離そうと言うのか!?」
「好き合っていようがいまいが関係ない。あのプレイヤーに通じるとでも思っているか?」
「う……。」
「よし!!今の内だ!!行け!!」
 レヴィンの一言でファバル、スカサハ、レスターがアレスの方へと向かう。 ロープでぐるぐるにされてしまい、終わりにデルムッドのミラクルビームをくらわされた。 デル……君は最強だよ(ほろり)。
「コホン。よし、次は最後。ユリアだ。彼女の相手は……」
 ユリアは恋愛があまり進行しない。だが彼女はグランベル皇女である。 彼女の恋人になれれば出世間違いなし!!しかもユリアは可愛いぞ!!
「相手は……ヨハルヴァだ。」
 何〜〜〜〜!?とその場の皆がそろって叫び声をあげた。 それもそうだろう。何故ラクチェ馬鹿なヨハルヴァがユリアの相手になるのだろう?
「これも晶の趣味だ。ラクチェがファバルだからヨハルヴァに他に恋人を作らせたかったらしい。」
 そんな理由で……。
「あの……。ヨハルヴァさん。よろしくお願いしますね?」
「お、おう。俺がしっかり守ってやるからな。」
 何だかんだ言って良い感じみたいだ。よしよし♪
「これにて終了!!各自持ち場につけ!!」
 不満を口にしながらも登場場所へと向かう戦士達。 恋人のできる者達はルンルン気分。独り身はウンザリ気分。 今回のロードはどうなることやら♪



 その後……恋人のできなかったセリスにいびられる一人の騎士がいたそうだ。 彼の背中には鞭でうたれた傷があったとかなかったとか。
「うわ〜〜〜!!やめてください!そ、それだけは〜〜〜〜!!」
「うるさいうるさい!!何で私が独り身なんだ!?間違ってる〜〜〜〜!!」
「……シグルド様…。申し訳ありません。私は…もう……」




真偽は闇の中へ…………



                              f i n