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ESLの前で

作者略歴

1957年

千葉県生まれ

1976年

多摩美術大学 絵画科 日本画専攻 入学

1980年

多摩美術大学 絵画科 日本画専攻 卒業
東京セントラル美術館日本画大賞展入選

1983年

モザイク壁画の制作に従事
公共施設、商業店鋪などの壁画及び原画制作

2000年

星の工房 設立

2003年

この頃より本格的に貝覆い貝の制作始める


私事で恐縮ですが、、、

 「なぜ貝合わせを描こうと思ったのですか」と良く聞かれます。昔っから何となく興味は有りましたが、強い意志は無く、したがって明確な解答は答えられません。

 ただ、老眼鏡が必要になった時に、ものすごい焦りと恐怖を予感しました。ン十年ぶりに極細の面相を持つとそれは現実となりました。かつては1cm 幅に20本位の線は入りましたが、10本がせいぜいです。しかもヨレヨレ。この現実が、怠慢と老化なのだと思い知りました。
 そんな時期、姪に女児が生まれました。姪には叔父らしい事は何もしてあげられなかったので、「今まで誰も見たことが無いような美しく綺麗な貝合わせ」を描いてやろうと、無謀な事を思い付きました。それなりには仕上がりましたが、頭の中で描いた物とは程遠いものでした。ならば、姪の子が嫁に行く時はという思いが強く残りました。

 とにかく、線を引く事から始めました。自分の頭の中で思い描きたい物を形にする事は並み大抵の事ではありませんでした。これは今でも続いています。細く綺麗な線が引けなければ、美しい黒髪は描けません。むかし程ではないにしろ、技術はかなり戻ってきましたが、思い描く、美しい黒髪を描くのは、おそらく一生かかっても無理かもしれません。でも、努力は続けます。
 また、有職故実(平安装束の約束事)の知識もあさりました。描くからには対象物をとことん知りつくしたいと思っています。源氏物語は所々で衣裳や調度のことに触れています。間違った事は描けません(配色のバランスであえて衣裳を変えた事はありますが)。終わりのない学習はこれからもずっと続くのだと思います。

 貝覆い貝にいくつかこだわりを持っていますが、その中でも絵具、とくに岩絵具。これは譲れません。古い貝合わせはほとんどが泥絵具(水干絵具)で描かれています。微粉末の絵具で良くのびて、描きやすいのですが、私は色に深みをあまり感じません。岩絵具は、孔雀石などの貴石や色ガラスを砕き絵具にした物です。砂のような粒子で、扱いは難しいですが、色の深みや発色は比類する物がないと思っています。マットの地肌を持ちますが、良く見ると一粒一粒は光っています。こんな綺麗な絵具を使える事を誇りにさえ思います。もちろん胡粉や黄土など微粉末の絵具も使いますが、天然由来の物に限っています。
 それに、細密な描写。父親が古美術の商いをしていた影響でしょうが、刀装小道具が好きです。拡大鏡で見なければ解らないような図柄をふんだんに使い、刀の外装として組み上げた時に、紐で見えなくなってしまおうが、そんな事はお構い無しです。見えない所でも手を抜かない、そんな日本人の美意識の塊のような物です。そういう物を子供のうちから見て育ったので、美という基準がその辺にあるのかも知れません。描きこめる所は描きこむ。特に衣裳は、面積が小さくても柄を入れた所とそうでない所では違いが出てきます。何となく深みが出てきます。
 他にも胡粉盛り上げの金箔地や、金銀泥を箔から作ったりなどの色々なこだわりを持っていますが、すべては、昔の貝合わせのコピーを作るのではなく、平成の貝覆い貝を作ろうという思いからです。絵の構図も、伝来の古画や貝合わせの絵は参考にはしますが、源氏物語などの古典を読む所から始め(現代語訳ですが)、新たに構図を起こす様に努めています。昔の様に360組み揃えて作るのではなく、一組一組を大切に作りたいと思います。

 若い時分、なかなか良い絵を描くことが出来ず、一度は日本画を書き続けることをあきらめました。どんなに頑張っても、宗達はおろか、明治の名前も忘れられそうな日本画家の足元にも及ばない。でも、名を残したい。そんなたいそれた考えなど持たず、この貝を持つ人が、ただただ綺麗だと思ってくれればそれで良いのではないかと思える年齢にもなりました。初心の、今まで誰も見たことが無いような美しく綺麗な貝合わせを作り、それを手にした人が喜んでくれるような仕事を信念に、精進してゆきたいと思っています。

平成己丑 新年  星野 勝




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