*54番札所から伊予の国・<菩提の道場>続きます。

4月26日(第35日)


 この駅には”つばめ”が巣を作って卵を暖めていました。もうそんな季節になったのかと思い、いつこの旅が終わるのか考えざるを得ません。電柱や標識に貼られたマークをたよりに歩き、お寺での納経帳へのスタンプラリーはいよいよ終盤です。しかし野球で云えば7回、9回の裏まで何が起こるかは分りません。頑張って雨の中を歩きます。



 一応35km先のJR伊予富田駅を目標に、そして午前中に20km先の今治市に入ればとただひたすら歩きます。しかし、海岸沿いの国道には歩道の無い所もあり、大型トラックとすれ違うときの水しぶきや、猛烈なスピードでカーブから突然現われる車も困ったものです。道路沿いの店の主人が牛乳パックと、追い越して止まった車の窓から缶コーヒー一つをもらいながら文句も云わず歩くのです。なんとか歩き、12時には五十四番札所へ到着しました。団体のバスもなく静かなお寺の休憩所でゆっくりと休み、時間ぎりぎりに出発しました。五十五番札所南光坊は今治市のど真ん中に神社と並んであり、縁日にはたくさんの店が並ぶと思われるスペースがありました。ここで、これ以上進んでも5時までに五十八番札所は無理と確信しました。今日はここまでで終了します。

    


JR浅海駅・・・五十四番札所延命寺・・・五十五番札所南光坊・・「笑福旅館」



4月27日(第36日)

 今日は”へんろころばし”と呼ばれる山道のあるお寺のふもとまで歩く積もりで宿を出ます。そうしたら旅館の若旦那が宿から次のお寺さんまで車で送ってくれました。

 その若旦那は面白い人で、お寺さんに対して葬式屋と考えていることを話ししてくれました。結婚式は教会で、子供が生まれれば神社へ、死ねば葬式をお寺にという付合いをするとの事でした。それも現実で確かなものだと感心しました。だから「歩きおへんろが一番ぜいたくだ」との思いになるのだなあと連想してしまいました。





    

 五十六番札所は街のはずれにあり、工事中のお寺でしょうもない状態でした。このお寺を過ぎると田園地帯を歩き、小さなお寺に到着しました。可愛らしいお地蔵さんが迎えてくれました。


五十六番札所
泰山寺・・・五十七番札所栄福寺・・

     


 田園地帯から周辺の小高い山を目指します。溜池風の池の周りから登って静かなお寺に着きます。五十八番札所です、これだけのお寺を周っているともうどんなお寺か理解する力もなく次へ進みます。山道を降りて来ると、”みちしるべ”の石の写真を取りながら逆打ちのおへんろをしている人に会い、写真を取らしてくれと云われちょっと話をしました。


 また田園地帯に出て歩いていると軽のバンに乗った老人が「国分寺へ行くんだろうから乗りなさい」と声を掛けてくれました。この人は74歳でとても元気があり、林業の現場から営林署に移り定年退職したとのことで、その後の生活はとても楽しくて今でも元気はつらつのようでした。もっと若いときにこんな時代なら良かったと昔の軍隊などを恨んでいました。


 五十九番札所国分寺で今日のお寺は終わります。次の六十番札所がお四国さん第3番目の難所で約33km先です。ふもとの町の旅館まで16km頑張って歩きます。途中、交差点の角の家の奥さんからコーヒーのお接待を受けました。気が付いたときに声を掛けているそうです。「日野」さんという家でした。


 宿に着くと、数日前から何回かお寺で顔を合わせた同じおへんろさんと食事をしました。二人とも話題はおへんろのコースより自分達の生活やこの旅の目的などでした。56歳の自営業の人は、自分の会社を整理している過程で旅に出たようで、この旅で捨てるということを意識していました。持って来た物で不要になった地図などどんどん捨ててきたそうです。若い22歳の青年はこれから仕事で必要な人とのふれあいを体験したくて来たそうです。夜遅くまで話がはずみ宿の家族は迷惑したことでしょう。


五十八番札所仙遊寺・・五十九番札所国分寺・・「栄家旅館」








4月28日(第37日)

 朝はそれぞれ三人ともバラバラで食事をし出発をしました。自営業の人は朝一番で、若者は最後にといった順でした。それぞれ自分のペースで歩くのです。林道から山道に入り、1時間20分との表示があり、そこを2時間弱ザックを背負って歩き、六十番札所横峰寺に着きました。700mほどの山で、山にへばりついたようなお寺でした。


六十番札所横峰寺・・


 次の六十一番札所まで山道を下ります。約2時間半山の中の道を通って下の町に出ました。神社の横にそれは異質のお寺がありました。大きな公会堂のようなお寺にはびっくりしました。2階が大ホールになっていて、劇場のような椅子に座ってお経を聞くのでしょう。これぞ商売といった感じがして何か変でした。今日も後半はスタンプラリーになってしまいました。5時までに六十四番まで終わらないと先に進めません。頑張って歩いてなんとか5時前に到着しました。

        


街の中のお寺で順にまわります。バタバタして、六十三番札所は写真が取れていませんでした。

 あっという間に進んでいます。次のお寺まで45km、そしていよいよ六十六番札所雲辺寺まで合計で70kmという事になりました。明後日の晩には雲辺寺に到着しているかも知れません。そんな訳にいきませんが、湯の谷温泉という銭湯で風呂に入り国道沿いの喫茶店で食事をしました。西条市常心の「コーヒー専科オハラ」という店で、そこのママさんが食事代をお接待にして励ましてくれました。そして、国道11号をさらに歩きJR中荻駅を目指します。まだ7kmほどあります。1時間ほど歩いたらさっきの店の客がワンボックスカーで待っていて駅まで送ると声を掛けてくれ、送ってもらい駅で少し話しをして別れました。やっぱり周りに住宅があって、明るくて僕にとっては安心して寝られる場所でした。


六十一番札所香園寺・・・六十二番札所宝寿寺・・・六十三番札所吉祥寺・・・

・・・六十四番札所前神寺・・・JR中荻駅


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