*24番札所から土佐の国・<修行の道場>を歩きます。

3月26日(第11日)

 いよいよ、坂本竜馬の土佐の国に入りました。室戸岬の突風はものすごく、服の隙間から体の芯に吹き抜けていきます。しかし、4時ごろには風も収まり、朝日の見えるところで日の出を待ちました。さっきまでの突風を起こした厚い雲が東の空にあり水平線から少し上で太陽が顔を出しました。このあたりは水難で犠牲になった方々のお地蔵様や像がたくさんあり、その間から山道を登り二十四番札所に入りました。




 お参りがすんで納経所へ入ると、そこはとても広く、暖房が効いていました。そこのソファーに座りウトウトしていたら仮眠するように進められ、畳の上で座布団を並べ、掛け布団を掛けてもらいました。目が覚めると12時を過ぎていました。お礼を言ってその納経所を出て、今日の宿を調べ、10kmほど先の民宿「うらしま」に電話をして予約しました。二十四番札所へ登ってくる大きな車道を通って下へ降り、海岸沿いの静かな港町を歩いて二十五番札所へ向かった。


     


 二十五番札所、津照寺も団体の人達で賑っていました。へんろみち保存協力会に関係する人がいて銀色の納め札を頂きました。すごい人達がいるのだと関心しました。

 そこから3km先の民宿「うらしま」で、洗濯と入浴をして暖かい布団の中で、キムタクのテレビドラマの最終回を見て、今ごろ子供達も見ているなと思いながら寝ました。


・・二十四番札所最御崎寺・・二十五番札所津照寺・・民宿「うらしま」で宿泊









3月27日(第12日)

 朝、食事が出来たというインタフォンの声で目が覚めた。


 室戸岬から高知市までやっぱり80kmある。しかし、途中に三ヶ所のお寺があることでかなり救われる。ただただ歩くだけほどつらいものはない。それに、海岸沿いにたくさんの港町があるようだ。宿から20km先までは歩けそうだし、その後は安芸市に入れば阪神タイガースの春のキャンプ地だし、もっと暖かいだろうと思い出発した。





 二十六番札所は、少し山道を登った上にあり、静かなお寺だった。大師堂の横に、弘法大師が一粒の米を炊いたら万倍になったという錆びた大きな釜があった。この辺から稲は二期作なのだろうか?二期作なら2倍のお米が出来るのだから理解出来る。また、山道を下り、海岸線に出て国道を歩き始めます。


   

 古い国道の西、海岸線沿いにバイパスが出来ていてどちらを歩いてもいいのです。旧道には古い民家などがありとても静かな街でした。途中国道沿いの食堂で電気を借り昨日までのホームページを完成させてまた歩き始めました。食堂で後から来て先に出て行った一人おへんろさんに追いつき一時間ほど一緒に歩きました。その人はとても健康そうな人で好感が持てました。彼が云うには、最初に和歌山県の高野山に行って出発の挨拶をして納経帳に朱印をもらい、船で徳島へ入ったとの事でした。私は、高野山は最後に報告に行くのかと思っていたけど、確かに一番札所で購入した納経帳には最初のページが高野山になっているので変だなあと思ったのは事実でした。


 奈半利町の市街地に入りその人と別れ、親切な電気屋さんの「みなみ」という店で電話の接続に成功しました。奈半利川を渡り今夜の寝床を確認しましたが、そばにお墓があり、まだ7時ごろだというのに周辺の店は真っ暗なのです。ガソリンスタンドも閉まっています。ずうと先に明るい店があるのでそこまで歩きましたがパチンコ屋で、結局川を渡ってもとの「みなみ」電気店の近くまでもどり食事をしました。どうもあそこで寝るのは恐い。食後、奈半利川沿いにある二十三士温泉でまたぬるぬるした湯に入り、寝床の予定場所をそっと通り過ぎました。奈半利町は、幕末の勤皇の志士、二十三士殉節の地として有名で、さっきのお墓は二十三人の武士が首を切られた処刑場だったのです。


 
30年前からやっているという鉄道工事の作業所に明かりが付いていたので、一緒に残業をさせてもらい、夜半に二十七番札所への分岐点にあるバス停の待合小屋まで送ってもらい、そこで一夜をあかすことにしました。

・・・・二十六番札所金剛頂寺・・・・・バスの待合小屋











3月28日(第13日)

 明け方まで強い南風が吹いていたが、風は止み雨になった。6時30分にポンチョをまとい二十七番札所へ向かった。登りの車道を3kmくらい歩き山道に入ります。車道がつづら折りになっていて山道はそこを串刺しにするようにほぼ直線で登っていきます。駐車場まで300mという所で自転車を押している青年に出会い、駐車場から更に登って山門があり、もっと奥に納経所がありました。納経所のお坊さんは優しい人で、奥さんが歩きおへんろの私達に暖かいコーヒーとトーストと八朔のモーニングサービスをお接待してくれました。自転車の青年は、私の次男と同じ世代で就職浪人になり、香川県の大学を卒業して名古屋へ帰る前におへんろを体験しているようです。就職浪人なのに結構明るい青年で、宗教心というよりもウォークラリーの感覚で回っているとのことでした。




 本堂と大師堂はさらに山の上にあり、納経所で傘をかりておまいりをして山を下ります。途中で昨日の人とすれ違い、分岐点の手前で初めて若い女性ともすれ違いました。きっとおばあちゃん子で、亡くなったおばあちゃんが一度行ってみたいと云っていたおへんろさんをおばあちゃんに代わって来ているのかも知れないと勝手に考え挨拶をしてすれ違いました。

             


 また、国道に出て海岸沿いの道を進みます。しかし、このあたりの街はとても静かです。なにをして暮しているのかと心配になるくらい静かなところです。雨は止み、強い東風が大きな波を砕けさせて岩にぶつかる荒々しい海です。そんな海と厚い雲がかかった空を眺めながら国道を進みます。遠くの方にいくつかの岬が見え、その先が高知市なのかなと訳の分からないことを考えて進むのです。


 そうしているうちにひょこりと究極のお地蔵さんにでくわしました。なんと「寅さん地蔵」でした。誰も通らない旧道のひっそりとしたT字路の角にお地蔵さんはありました。写真を取って貰いたく待っていても誰も来ません。国道の方は沢山の車が突っ走っているのにここは静かでやっと来た車の運転手さんに取ってもらいました。注釈では、幻となった「寅次郎花へんろ」のロケ地に決まっていたこの場所で、渥美清さんを追悼するために作ったものでした。





 安芸市に入りPHSが接続可能なことに気付き、今夜は旅館で宿泊する事にしました。しかし、この街はとても大きいのですが、古い街で道が迷路のようになっていて旅館にたどり着くのに一苦労してしまいました。やっぱりリアルタイムな情報公開・更新はホームページの命です。足のまめから水を抜き、イソジンで消毒しながら書いています。








・・・・二十七番札所神峰寺・・・・・安芸市・旅館清月



3月29日(第14日)

 今日は大変だった、二十八番札所まで25kmでさらに4kmほど先が宿泊所です。高知市へ向かう長丁場なのです。出発してすぐに、国道から平行で、海岸沿いに作られた約15kmのサイクリングロードを歩くことになりました。道は単調だし、休憩所は遠いし、風は昨日と打って変わって強い西風でフラフラと風に向かって歩くのも結構つらいものです。

 よく、人は徳島の人と高知の人の違いをいいます。徳島の人は「やさしい」高知の人は違う。でも歩いていて高知の人達もみな親切でした。やさしい心の持ち主ばかりです。途中に童謡の碑があったり、また無人島(鳥島)で十数年暮して奇跡の生還をした人を奉ってあります。途中で、おばあさんが一人で海岸の傍で日向ぼっこしていて私も座って話しをしました。毎日そこへ来て座っているか、家でも横になっているそうです。息子は酒で死んでしまい、娘は群馬県に嫁いで帰ってこない、一人で暮しているようでした。でも顔はいつもニコニコしていて、幸せそうでした。


     

 二十八番札所には5時30分に到着しました。納経帳は明日でないと朱印を貰えないので頑張って宿泊所まで歩いた。今日は、無料宿泊施設に泊まります。都筑さんという方が歩きおへんろを泊めてくれるのです。夕食前のお祈りがあり、正座している足が痛くて経本を目で追いかけるのが精一杯でした。今日は6名の歩きおへんろが宿泊して、にぎやかな夕食になりました。ここまで来るのに平均10日〜14日との事でした。私はちょうど14日でしたが9日で来たという若い人もいました。3人の相部屋でそれぞれ明日も早いので、すぐに寝ました。

安芸市・旅館清月・・・・無料宿泊施設


3月30日(第15日)

   
今朝は6時15分には出発した。昨日の二十八番札所へ行かなければならないので、宿にザックを置いて軽装で歩きます、これなら楽だというのがよく分かりましたが、これはどうしようもありません。宿を出てすぐに、久々に犬が近寄って来ました。普通ののらいぬで、近づいてはこないのですが、前にいったり後ろを歩いたりします。宿から1時間で二十八番札所へ着き納経をしました。高知市に近づくとお地蔵さんはお寺の中で集団で並んでいます。なにか訳があるのでしょう。



 今日の予定は、昔の友人に会うことです。何日か前にハガキは出しておいたのですが今朝PHSで電話をして高知駅で会うことにしたのです。大阪で働いたときに東三国で半年間家賃折半のルームメイトになった先輩です。私が設計担当した物件の工事担当で、現場は千里NTで生駒山の方から通っていたのです。その現場が完成して退社し、高知へ帰りました。高知にはその時の正月と彼の結婚式のときに来たのです。24年ぶりです。



 犬は、宿に戻りザックを背負ってまた歩き始めてもついて来てます。この辺りは、交通量の激しい道は避けた農道のような道を歩くので犬も平気でついてくるのでしょう。昼まえに大きな県道に出て犬はどうなるのかと心配しながら休憩しました。そこで、店の人にアイスクリームをお接待され、犬にもカップのふたにアイスクリームを入れてくれました。一緒に食べて、歩き始めようかなと思ったとたんに犬は消えていました。結局5時間近く犬と一緒だったのです。あの犬は、オシッコをするときに片足を上げませんでしたからきっとメス犬でしょう






         


 二十九番札所はとても静かで端正なお寺でした。枝垂れ桜にもやっと花がつきました。手入れが行き届いてほっとした気持ちになり、ベンチに座って一時間ほど休み素足になって足を乾かしました。それからまた、国道を避けた田んぼのあぜみちや、静かな住宅地を抜けて歩きます。国道に出ると雰囲気が一変し活気と騒音の世界です。そして高知市に入ります。三十番札所は山門がなく金色の柱の本堂がデーンとある開けっぴろげなお寺でその前のお寺とは全く対照的でした。団体のバスも最後の時間であわただしく行き来していました。



      



 
 JR土佐一宮で電車に乗り高知駅で堀部さんに会いました。電車に乗るのは2週間ぶりです。駅を出て昔のように焼肉屋に行き大ジョッキで乾杯をして3人前ずつの大皿に乗った肉をたらふくお接待されました。堀部さん、楽しい時間ありがとうございました。






・・二十八番札所大日寺・・二十九番札所国分寺・・三十番札所善楽寺・・高知駅



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