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こぶし・木蓮 |
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北国では、梅も桜も同時に咲くそうですが、関東では梅の花が散りかけてから桜が開花するまで、一ヶ月近い時間があります。その浅い春に華やぎを見せる数少ない花が、こぶし、木蓮です。
千葉県の私の生家には白木蓮の大木があって、毎年この時期に豪華な白い花を木いっぱいにつけ、弥生空を覆うばかりでした。子供心にも、その気品のある白い大きな花に感動したものでした。以来、現在に至るまで、白木蓮、紫木蓮が大好きです。 |
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モクレン科の花樹のなかで、もっとも早く開花するのが、こぶしです。
山野に自生することも多く、高さ20mぐらいもある大樹が日当たりのよい里山の斜面に盛大に白い花を咲かせているのを、ときどき目にします。
こぶしは、白木蓮よりつぼみも花も小さく、また白木蓮の花がややクリーム色を帯びているのに対して、こぶしの花は純白です。
春とは名ばかりの鉛色の空をバックに高い木の上で咲くこぶしの純白の花が、寒々と寂しそうに見えることもあります。 |
こぶしの開花から一週間ほどしてから、白木蓮の大きな白いつぼみが開き始めます。私は、木蓮の淡い黄緑色を帯びた深みのある花の色が昔から大好きです。
木蓮に
白磁の如き
日あるのみ 竹下しづの女
「児を須可捨焉(すてっちまおうか)」の俳句で有名な竹下しづの女の木蓮の俳句です。木蓮の花が開いたかと木のほうを見たが、まだつぼみは固く閉ざされており、梢の先に浅い春の日がかかっているだけであった、という句意です。 凛とした硬質の句調に胸を打たれます。 |
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木蓮は地球上で最古の花木といわれており、恐竜の時代からすでに現在と変らない姿で咲いていたそうです。 気品のある花の中に秘めた強靭な生命力に驚かされます。
この時期には日差しはかなり強くなり、白木蓮の花も大きく開いてきますが、ちょうどこのころ春一番などといわれる風雨が強い日がよくあります。
木蓮に
日強くて
風さだまらず 飯田蛇笏
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ただ木蓮のありのままを詠んだ俳句ですが、丸太に鉈で彫った円空仏のような力強い句調ではありませんか。 飯田蛇笏(だこつ)は、1885(明治18)年の生まれで、高浜虚子より11歳あとの俳人です。山梨県境川村の自然の中に暮らし、彫りの深い自然観照の句を俳誌「ホトトギス」に数多く発表しました。いわゆるホトトギス調とは一線を画す、骨の太い句風です。
俳句界の最高賞とされる「蛇笏賞」は、飯田蛇笏を記念したもので、前の年に発行された句集の中で最も優れているとされた作品に贈られます。 |
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白木蓮の花は、サイズが大きいだけに、この時期に多い強い風で損なわれやすいのが悲しいところです。風で花びらがもまれると、肉の厚い花びらが茶色に変色して、見るも無残な姿となってしまいます。
このために、例年、木蓮の見事な花を観賞できる花期が長くないことが多いのです。夜、強い風の音がすると、木蓮の花は大丈夫だろうかと心配になります。
風やみて
散りし木蓮
惜しみけり
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中村草田男に、次の木蓮の俳句があります。
木蓮の
風のなげきは
ただ高く 中村草田男
この時期の強い風の音は、木蓮の嘆きの声のように聞こえます。
白木蓮の花が散りかけるころ、かなり暖かい日が続くようになり、やがてソメイヨシノが方々で華麗な花を開き始めます。 |
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木蓮には、白木蓮のほかに紫木蓮があります。白木蓮は高さ10m以上に成長しますが、紫木蓮のほうは普通樹高4、5mぐらいです。そのため、東京では最近庭木としては白木蓮は敬遠され、次第に紫木蓮が増える傾向にあります。
インターネットで調べると、どこそこの公園、あるいはどこそこの美術館には大きな白木蓮があるというような情報が書き込まれています。それくらい白木蓮の大木が、東京には少なくなったということでしょう。 紫木蓮の開花は、白木蓮より遅く、ほぼソメイヨシノと同じころです。 |
白木蓮や桜が散り、新緑が濃くなったころ、赤みがかったあでやかな花を咲かせます。
そのころは天候が安定して強い風が吹くのが少なくなることもあり、紫木蓮の花期は概して白木蓮より長く、5月の連休に近いころまで元気に咲いています。
つい最近、俳人鈴木真砂女さんが亡くなられました。蛇笏賞を受けた真砂女の句集「紫木蓮」の中に、次の俳句があります。
戒名は
真砂女でよろし
紫木蓮 鈴木真砂女
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染色の世界では、「江戸紫」は赤みがかった華やかな紫だそうです。 紫木蓮の色は、その江戸紫よりさらに赤みが強く、木によっては紫というよりは赤に近いものもあります。
日本の花では、くずの花、アザミの花、紅はぎなどが、これに近い色です。日本古来の色とされる「古代紫」というのも赤みが強い色だそうです。
阿弥陀仏は、極楽浄土から紫雲に乗ってご来迎されるそうですが、その雲はどのような色をしているのでしょうか。 |
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