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野鳥の中西さん |
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深大寺は天台宗の古刹で、東京都調布市の郊外にあります(下左の写真は深大寺の本堂)。本堂の裏山に開山堂という小さなお堂がありますが、その横にある雑木林の中に「日本野鳥の会」の創始者として有名な中西悟堂の銅像がありました(下右の写真)。 |
中西さんは、明治19年(1895年)に金沢市に生まれました。『路傍の石』などで有名な作家山本有三とほぼ同じ時期の生まれです。
16歳のときこの深大寺で天台宗の僧籍に入り、悟堂と改名したとのことです。あの「野鳥の中西さん」として有名な人が僧侶だったとは、私はこれまでまったく知りませんでした。
その後、中西さんは文学の道を歩み、多くの詩や短歌を発表しました。歌人として高名であったということですが、やがて短歌から詩に重点を置くようになりました。 |
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中西さんは、昭和の初めから野鳥の研究を開始し、昭和9年に「日本野鳥の会」を設立して鳥類の愛護運動を始めました。
現在使われている「野鳥」、「探鳥」という言葉も、中西さんが造られたのだそうです。
また、今日行われている科学的な野鳥の観察方法も、その多くはやはり中西さんが開発されたものです。
私も、一時野鳥の観察に熱中し、双眼鏡を持って都内の公園を盛んに歩き回ったことがありました。都内でも、探せばさまざまな種類の野鳥がかなり見つかるものです。 |
最近では双眼鏡とデジカメが一体になったものが販売されているそうですが、これは特に野鳥の愛好家には有難いツールだと思います。
昭和の初め当時は、野鳥などはいくらでもいるものだから別に愛護する必要はない、というのが一般的な認識でした。逆に、作物を食い荒らすということで、「害鳥」という言葉がよく使われていたのです。
その「害鳥」を駆除するために、「かすみ網」という細い糸で編んだ大きな網を野原などに設置して、野鳥を種類などかまわずまさに一網打尽に捕まえることが普通に行われていました。中西さんはかすみ網を止めさせる運動を起こし、粘り強い活動によりとうとうそれを禁止する法律をつくるのに成功されました。 |
東京都八王子市にある高尾山は、真言宗智山派の大本山薬王院(下の写真)のある霊場ですが、植生が豊かなことでも有名で1500種以上の植物が茂っているといわれます。
そのため野鳥の種類も非常に多いので、中西さんはこの山に足しげく通い、野鳥観察を続けました。さらに柳田国男ほか多くの文学者、文化人を高尾山に案内して野鳥観察を紹介しました。中西さんのこの啓発活動により、高尾山が野鳥の宝庫であることが世の中に広く知られるようになったのです。 |

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薬王院・飯縄権現堂の裏に、俳人水原秋桜子の句碑がありました(左の写真)。
仏法僧
巴に翔けて
杉の鉾 水原秋桜子
水原秋桜子は、1892年生まれですから、中西さんより3歳ほど年上になります。
中西さんの案内で秋桜子が高尾山に行ったとのことで、その際高尾山に生息する野鳥仏法僧について説明されたのでしょう。 上記の俳句は、仏法僧が高尾山の杉の頂を翔ぶさまをイメージして詠んだものです。 |
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中西さんは多くの短歌、詩を残していますが、やはり野鳥を詠んだもの、それらが棲息する山野を詠んだものが多いようです。
富士までに
およぶ雲海ひらけつつ
大見晴らしの朝鳥のこえ
中西悟堂
高尾山薬王院に泊り、翌日の早朝高尾山頂から雲海のかなたに富士を望んで詠んだ短歌だそうです。私もときどき薬王院に行きますが、まだ山頂から富士を見たことはありません。ぜひ一度見たいものです。 |
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次の短歌は、堂々とそびえる浅間山の山麓に響く雉子の声を詠んだものです。
浅間山
雲ぬきて立つ朝晴に
ひびきて雉子の声が谺す
中西悟堂
私も何度か浅間山山麓に行きましたが、山頂に近い鬼押出しのあたりでは小鳥のさえずりがあまり聞こえないように思われました。やはり火山性ガスの影響でしょうか。
現在も活発に活動している大きな火山の恐ろしさを垣間見る思いをしました。 |
上記の短歌に見られるように、中西さんの作品には野鳥への愛情、野鳥を育む自然への敬愛があふれています。
その中西さんが始めた野鳥愛護運動は次第に幅広い層の支持を受けるようになり、最近では「日本野鳥の会」は全都道府県に支部ができて支部数89、会員数約48,000名に達したとのことです。
例年5月の連休明け、5月10日から5月16日までの一週間は「愛鳥週間」とされ、野鳥保護のための催しが各地で行われます。繁殖期に入った野鳥を観察し、その保護の必要性を国民全体で理解するというのが愛鳥週間の主旨ですが、中西さんをはじめとする関係者の努力により、今2010年で愛鳥週間が始まってから60年になるそうです。
木々の新緑が濃くなってきたこの時期、近くの公園や水辺に行って活動が一段と活発になった野鳥たちを観察してみましょう。 |
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