展覧会案内・Exhibition Information

画廊企画
宇野和幸 展
Collaborastion  蝕 L´eclipse vol.3
屋内退去 〈沈黙とはかりあうために〉
2000年9/18(mon.)〜9/27(wed.)
11:00am〜19:00pm(最終日17:00pmまで)
 美術:宇野和幸  文:田野倉康一  詩:広瀬大志
企画:生野 毅  映像:関根博之

特別企画

「LANDSCPE OF MIMESIS」`96 160x200cm 和紙にミクストメディア

和紙にミクスドメデイアの作品で、バーチャル時代の新しい風景画を描いている。Collaborastion  蝕  L´eclipse vol.3 として3回目のコラボレーションの試みである。 絵画と詩と映像のコラボレーションが、いかなる展開をみせるのか、注目される。

「LANDSCPE OF MIMESIS」`96 200x300cm 和紙にミクストメディア

2000年9月・・・。
コラボレーション・プロジェクト『蝕』は、「屋内退去」
というコンセプトのもとに再び始動する。
 「屋内退去」・・・。この一種奇妙な言葉が私たちの耳に触れたのは、1999年秋、のどかな秋晴れの空の下、東海村の臨界事故が勃発したおりのことである。「過剰報道」と指摘されもした阪神大震災が、その阿鼻叫喚ともいえる惨状を江湖に広く伝えられたのとは対照的に、臨界事故は、事故の当事者のみならず、報道を伝えられる側の人間にとっても、無気味な、見えざる恐怖を伝えてくるものであった。阪神大震災が、20世紀的なるものの崩落を象徴していたとするならば、臨界事故は、来るべき世紀における未知なる恐怖のひそかな予兆であった、といえないだろうか。そして、この見えざる恐怖に対して、付近一帯の住民たちに、事故の翌日まで自宅の「屋内」に「非難」せよ、というおよそ無謀な措置がとられたのである。
 「屋内退去」・・・。そう、来るべき世紀を目前にした私たちの一人一人が、今、不穏な沈黙を孕みながら到来せんとする未知の〈他者〉を前にして、為す術もなく「屋内退去」の状態を強いられているといえないだろうか。そしてそのことは、『蝕』のメンバーたちの作品の変遷にも、意識的にも無意識にも反映されていると見受けられる。
 かつて宇野和幸の『LANDSCAPE OF MIMESIS』は、さまざまな意味での「閉域」に生きている私たちの〈現在〉の間隙を縫って、〈現在〉に拮抗するものの過剰な噴出をあるがままに表出しようとする志向性が感じられたが、第2回目の『蝕』の前後からは、過剰さというよりは、この世界の実在性の根本を透過し、抽出しようとするかのような傾向が見出される。いいかえれば、過剰な「動性」から凝集された「静的」な世界へのゆるやかな移行である。広瀬大志は、「コラボ・オペラ」として朗読された詩篇「鉤爪の側から」を収めた詩集『喉笛城』においては、〈日常〉の背後に潜む非在の「闇」−「夜」の領域を特異な言語感覚で構築していた(「これからも私には/ずっと夜が続く」という末尾を持つ詩篇「ガス灯」も『喉笛城』には収められている。)が、その次に出版された詩集『ミステリーズ』においては、「太陽が/人が/陽が/太陽に/細くしなだれる昼に/昼へ」(「太陽が燃えている悪」)と、「夜」を超えて未知の「昼」へと突入しようとする志向が読まれる。同時に「静寂は滅びない/これは不可能な真実だ」「静寂は滅ぶべきだ/死にあるまじき行為として」(「調査のカテゴリー」)と、実在の世界をとりまく「静寂」−「沈黙」の領域が喚起されている。
 宇野の作品においても、広瀬の詩篇においても、「静寂」−「沈黙」とは、この世界の実在性をより深く見極めようとした時に感得されるものであり、また、『ミステリーズ』において「明日を欠いた日/国境は/血糊のように/燃え盛る火の玉が/さらに荒ぶ」と(「愛死(ラブデス)」)とも記されているように、実在性の亀裂の向こう側に、私たちが信憑している「明日」が欠落してしまうがごとき戦慄を伴った未知の〈他者〉を予感した時、おそらく私たちはもはや絶叫の木霊ではなく、私たちの聴覚が担いうる音域をはるかに超えた音域、すなわち「静寂」−「沈黙」をしか感じとることはできないのだ。
 「屋内退去」・・・。そして「沈黙」とはかりあうこと。私たちは、今到来せんとする未知の〈他者〉の顔貌を、ほんのわずかなりとも想起することができない。だが、かつての『蝕』が、未知の〈他者〉の到来の予兆として過剰の噴出するものの様相を見極めようとしたのに対し、今回の「屋内退去」においては、まさに未知の〈他者〉が孕む「沈黙」そのものに対峙し、その相貌を見極めようと試みるのである。いわばそれは、私たちの一人一人が、いつの日か「屋内退去」を解除され、〈他者〉そのもののあるがままの侵犯を受ける時まで続く、必死の抗戦のプロセスを生み出してゆくための営みなのである。
2000・8/30 生野 毅

宇野和幸
1960 千葉県生まれ
1990 東京芸術大学大学院美術研究科後期博士課程修了
1993 00コラボレーション・詩と美術
    (佐賀町エキジビットスペース)
    IMA絵画の今日展(三越美術館)`95`97
1994 モダニズムの系譜展(高島屋・梅田画廊)`96
1999 Northem Exposure(U.S.A.)その他、個展、グループ展等多数

「LANDSCPE OF MIMESIS」`96 140x200cm 和紙にミクストメディア

「蝕」展 vol.2 `97 東京大学駒場寮にて