MDH
用途
H邸(専用住宅)
所在地
佐賀県佐賀市
竣工
93.06



地方都市、市街地の恵まれた敷地に建つ、子供達がそれぞれ独立している夫婦ふたりだけのための住宅。
外観(外構工事着手前のもの、この後造園されている)
ガラス戸をすべて引き込み、障子のみで撮影。
内観
クライアントの提示条件は@エアサイクルを採用した健康住宅A花月の茶事が行える和室8畳をしつらえるB将来を考えて車椅子での生活に対応できること,であった.敷地分析の上,北側川向かいの隣地の竹の景を借りることとし,これに茶室を面させ,普段は和の居間(=仏間)である6畳を茶事の席では寄付(よりつき)にできるようにすることがこの建物の平面計画上の発端である.結果として省エネ手法や高齢者対応の手法を茶室を手掛かりとしてスケーリングや”流れる空間に見出すこととなった.
低く押さえた軒高(FL+2,300),低く押さえた天井(FL+2,136)と,それより高くなるダイニングの勾配天井,和室8畳の天井,更に外部への眺望を縁取る軒先線により,ゆるやかな変化と連続性,そして落ち着きを作り出している.940916→佐賀県庁,営繕課に提出.
第三回快適建築賞応募趣旨

・エアサイクル
近年のパッシブソーラーハウスの研究から生み出された、通風、換気による省エネルギーシステムの一つ。木造では、外壁際→屋根裏の換気経路と、内壁際→天井裏の換気経路の二つの換気経路(=二重のエアサイクル層)が内部空間の外側にある、魔法瓶のような構造である。空気が暖められると上昇し、冷やされると下降するという性質を利用している。昼間は、おおむね南側で上昇する空気で北側の空気を押し下げるという連続したサイクルで、住空間の熱環境、湿度環境の調整や、外部環境に対する抵抗性を持たせている。
・熱環境
建築の内部空間の快適な温度を保つために、パッシブソーラー的な手法では、特別な設備を必要としない方法で、外気温の変動に大きく左右されないようにしている。重いものが動かしにくいように、内部側の熱容量(暖めにくさ=冷めにくさ)を大きくして、これに適切な採熱/除熱のしかけを講じて外気温の変動に抵抗できるようにしている。
日本の伝統的な家は、一般的に内部の熱容量は比較的小さいために、そのままでは外気温に大きく左右されてしまうが、大きな屋根裏空間や開放的なプラン、土間を有することで夏場は比較的涼しく過ごせるようになっていた。ところが相当な隙間や断熱のしかけが一部不適切なために、冬は熱容量が小さいにも関わらずなかなか暖まりにくかった。そのために無闇に断熱材を入れるようになっていった、ここ二十年の反省をもとに、断熱材を入れる位置の選定や、それによって区画される内部の熱容量の調整によって木質系部材(特に土台や柱)の劣化を防止しつつ、外気温の変動に抵抗できるようになりつつある。
・通風
植樹による通風計画の絵を入れる(南北の開口部の件)
・湿度環境
木造の耐久計画上、特に問題となるのは水廻り(浴室、トイレ、キッチン)と玄関廻りの土台、軒先からの呼び樋廻り、そして床下空間の処理方法である。
・花月の茶室
独立した棟の茶室を使っての茶事での人の動きを、一棟のなかにある和室で実現するために日常での使い勝手と、茶事での人の動きの二通りの使い方ができるように計画している。
模型写真

深川良治建築計画研究室