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 初めて貝殻に絵を描いたのが大学の卒業まぎわです。なにか鬱積していて細かい仕事がしたくなり、6cmほどの貝に金銀地で葦に州浜の絵を描きました。現在紛失しましたが、今思っても稚拙なものだったと思います。それから、友人の女子誕生など色々な機会に、てすさびで描いてきました。それなりの色々なノウハウも蓄積しました。絵の上手さは別として、描いた絵を剥落させない事の重要性を思い知りました。
 貝覆い貝の制作技法は完全には残っていません。ここで紹介するのは私なりのやり方です。他にもっと良い方法があるかも知れません。紙に描くのならいざしらず、日本画の材料を使い、吸湿性のない貝に絵を描くのにはそれなりの方法が必要です。古典的な技法も踏まえて、ここで私が作っているままの、簡単な制作工程の紹介をいたします。興味のある方はご覧ください。
 簡単ですが貝合わせの作り方を紹介致します。一部専門的な用語も入っていますし、文章の便宜上、簡略した部分もあります。もっと詳しくしりたい方、「ここは違うぞ」と思われた方はお問合せよりご連絡ください。些細な技術ですが、技法は広く公開したいと思っております。


貝の準備 1

 適当なサイズの蛤を用意します。古くは、そのまま土の中に数年埋めて、磨き上げたそうです(出典不明)。今はそんな悠長なことはしません。
 貝殻は、生のまま中身を出したものを使います。火にかけた物は、殻が痛み割れやすくなります。貝殻を水に入れ、半月程腐らせます。
 貝殻をきれいに洗い、靭帯を切り取っておきます。アルカリ性の家庭用漂白剤で汚れを取り除きます。この際、貝殻をビニール袋に入れ、水を貼ったバケツに入れてから、ビニール袋に漂白剤を入れます。


貝の準備 2

こうすると、バケツの水の水圧でビニール袋は押され、漂白剤の使用量を少なくすることが出来ます。廃液は必ずハイポなどで中和して下さい。
漂白剤に浸す時間は、気温によってかなり左右されます。
 貝殻がきれいになったらよく洗浄し、水に浸して漂白剤を抜きます。日に当て、水を変えながら一週間程で良いと思います。
 貝殻をきれいに洗浄し乾かしておきます。この状態で保存しておきます。 完全に乾いてから、濃い膠を薄く、膠の溜まらないよう塗布します。


下地作り

 胡粉で下塗りを2、3回施します。胡粉は徐々に薄くします。気泡などの残らないように丁寧に塗ってください。また、窪んだ所に、胡粉が溜まらないように塗ります。胡粉に膠の輪ジミが出来たり、2度目塗り以降に、下地の胡粉が浮いたりした場合、そこから剥落する可能性が大きくなります。このような場合は全て洗い、膠を塗る所からやり直して下さい。
 胡粉を重ねて塗る場合、下の胡粉が完全に乾いてから塗ってください。後から塗った絵具が原因不明の剥落を起こします。


下絵

 古い貝合わせで源氏絵を題材とする場合、ほとんどに源氏雲が描かれています。盛上げをする都合上、ここで下絵を描きます。
 花鳥などを描く場合は箔を貼ってからでも良いかも知れません。
 エスキスを見て貝殻に下絵を描きます。この時源氏雲の地模様も描き入れておきます。特に注意する事は絵と源氏雲とのバランスです。源氏雲が少なすぎると豪華さに欠けます。絵をほんの気持ち横長の構図で取ると、何となくうまく落着くような気がします。


盛上げ

 源氏雲に胡粉で模様を盛上げていきます。昔の物は決まったように亀甲模様です。描く際、胡粉の濃度が大切です。薄ければ描きやすいが盛上がりません。盛上げが弱いと寝ぼけた感じです。濃ければ細かい作業は難しくなります。細い線、小さな点でかなり神経を使う作業です。
 優れたものは、かなり小さな亀甲模様が描かれています。岡山の林原美術館に有る「綾杉地獅子牡丹蒔絵貝桶」の貝の地模様は見事なものです。さすが、千姫の娘(勝姫)の婚礼調度です。


箔押し

 ドーサを施した後、源氏雲以外の部分にはマスキングをしておきます。古い貝合わせはこんな事はしていません。胡粉と金箔の密着が弱く剥離の危険性がある為と、金箔地の上に絵具を塗ると作業性が悪いためです。
 本来、箔の貼りたい形に膠を塗って箔を押してゆくのですが、私がやると下絵に箔が乗ってしまい、下絵が見えなくなってしまうのでやむなくマスキングをしています。
 箔は、膠と正麩糊を合わせ、少し粘度を持たせた物で貼ってゆきます。


箔押し完成

 箔は本来ある程度の大きさの物を一気に貼るのでしょうが、どうしても上手く貼れません。私は写真のようなサイズに切って貼っています。
 箔を一度で綺麗に押せた事はまず有りません。盛上げが強過ぎるのが原因で窪んだ所に箔が乗りません。しかし、凸凹のはっきりした物は仕上がりの豪華さが違います。多い時には3度も4度も修正します。
 箔を押し終えたら余分な箔を払い落とします。
 このままですと真っ金々で、金属質なので、藤黄で箔を押さえます。


彩色

 古い貝合わせで、岩絵具を使った物はまず見かけませんが、絵具は岩絵具を主体に使うようにしています。泥絵具に比べて扱いは難しいですが、発色や絵具の美しさは全然違います。
 胡粉や黄土で下塗りをしてから徐々に粒子の粗い絵具を重ねてゆきます。緑青の下には白緑、群青の下には白群の下塗りをします。
 絵具は、薄く、なるべく均一に塗り重ねてゆきます。天然の顔料、岩絵具を使うように務めていますが、色によっては新岩絵具も使います。


彩色完成

 輪郭に墨を入れてゆきます。墨は何種類かの具墨を使います。金銀彩で衣裳などを加飾をし、膠を足した墨で髪などを描きます。細部を整えながら描き足して、完成させてゆきます。
 本朱を使用しているため銀泥は焼けるので使えません。銀色は、明るいアルミと鈍い銀色の白金(プラチナ)とを使い分けています。
 金属泥は市販の物も使いますが、箔を下ろしたものを主に使っています。下し方で粒子の違いができ、鮮やかな色から鈍い色までそろいます。





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